ピーター・ジャクソン新作

大好きな監督、ピーター・ジャクソンの新作『ラブリー・ボーン』を見た。
ピーター・ジャクソンは『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』でアカデミー賞を取って、その後、『キング・コング』のような所謂ハリウッド大作(内容はジャクソン監督らしくグロテスクなシーンも満載だったが)を手掛けたりして、またプロデューサー業にも精を出しはじめ、今後はスピルバークみたいになっていくのか?なんて思ったりもしてたので、今回の作品は今後の彼の方向性を推し量る意味でも楽しみにしていた。

見てみて、ピーター・ジャクソンらしさが出ていてとても好きな部類の作品だとは思ったが、ピーター・ジャクソン監督としては、もっと3時間ぐらいの作品にしたかったのではないか?描き足りない部分がかなりあったのではなかろうかと感じた。やはり商業映画にとって、程よい上映時間にまとめるというのは、必須の条件だろうから、致し方ない。

まぁ、そう感じてしまうのは、この作品、あまりにも説明不足な感を様々な場面で抱いてしまうのだ。ほんとは、もっと掘り下げて描いてほしい登場人物がたくさんいるのに、結構その辺はアッサリと素通りされていってしまう。

でも、この作品、シアーシャ・ローナンの純粋で、輝きに満ちた、その眼差しに、とにかく参ってしまう。彼女が主人公を演じたからこそ、事件の悲劇や家族への想いが心に突き刺さるように迫ってくる。

内容は、予告など見ていると、まるで『ゴースト』みたいに、天国から犯人に関するメッセージを現世の家族へ投げかけていき、最後は犯人を追いつめ、ついに復讐を果たすような、そんなちょっとサスペンスチックな味付けをしたファンタジーと思ってしまう人が多いだろう。確かにそういう部分もあるにはあるが、そんなことを前面に期待して鑑賞すると、大いに失望してしまうだろう。観客は犯人に天罰が下ることを大いに期待するが、この映画は主人公がそんな憎しみを乗り越えるところに目を向けている。確かにスカッとはしないが、鑑賞後はいいようのない幸福感に包まれるのだ(またブライアン・イーノの音楽が映画によくマッチしていた)。

この映画のキャスティングは、とても素晴らしいので、ぜひ原作を、映画のキャスティング通りの俳優を頭に描きながら、読んでみたい。